夏には少し早いですが、妖怪(ようかい=化け物)の話を・・。妖怪の仲間で「のっぺらぼう」ってご存知ですか。そう、顔に目も鼻も口もない化け物です。僕らの知っている「のっぺらぼう」ですが、中国にもこれと似た化け物が存在します。「渾沌(こんとん)」と言われている化け物で、中国神話で四凶(しきょう)の一つとされています。「渾沌」以外の四凶しきょうは、「饕餮(とうてつ)」「窮奇(きゅうき)」「檮杌(とうこつ)」と言います。今回はこの3つは省(はぶ)くので、興味がある方は調べてみてください。
さて、この「渾沌」ですが、頭には目と鼻と耳と口の七孔(七竅=ななきょう=7つの穴)が無いのです。ねっ、顔に何も無い「のっぺらぼう」でしょ。他には、犬のような姿で、善人(ぜんにん)を嫌(きら)い悪人(あくにん)に媚(こ)びるとも表わされているのですが、「道教(どうきょう=中国の宗教)」では「鴻均道人(こうきんどうじん)」という名で擬人化もされています。
荘子(そうじ=中国の思想書)では、この「渾沌」が、のっぺらぼうの帝(みかど)として登場します。この帝(渾沌)の顔に、七孔(目2、鼻2、耳2、口1)を開けたところ、帝(渾沌)は死んでしまったそうです。
ところで、この遙(はる)か昔のお話しは現代にも当てはまりそうです。僕らは、都合の悪いことは、見ないし、聞かないし、しゃべらない、まるでのっぺらぼうのようです。『三猿(さんざる)』の時の話と同じですが、三猿って妖怪(のっぺらぼう)なのかも・・。今の社会にはいろいろな問題が浮上しているにもかかわらず、これらを見ようとしていないのでは・・・う~ん社会全体妖怪(のっぺらぼう)。
「渾沌」はその名の通り、混沌(こんとん=カオス)を表します。ギリシャ神話でカオス(Χάος, Khaos)は原初(げんしょ)の神(かみ)で、秩序(ちつじょ)無き状態をあらわし、同時に全ての事物を生み出すことができる状態も表します。やっぱ、この四凶(しきょう)の「渾沌」って、秩序があるようで無い今の社会を表現しているような気がします。もしかしたら、現代社会に七孔(目、鼻、耳、口)を開けたら、今の社会は突然死(とつぜんし=終わる)してしまうようなことが起こるのかもしれませんね。今は『渾沌こんとん』の時代なのでしょうか・・・?