春は桜、秋は紅葉。休みの日になると、その季節ならではの美しい景色を見に行く人たちでいっぱいです。とりわけ紅葉の季節は、緑色の葉っぱが次第に、赤(紅葉)や黄(黄葉)に変わり、山々が美しく彩(いろど)られていく様(さま)はみごとで、普段(ふだん)とはまた違う景色(けしき)を見に、多くの人達が足を運びます。
僕らは何故(なぜ)、紅(黄)葉のこうした色の変化を好んで見に行くのでしょう・・・・?この不思議な葉の変化って、冬の到来(とうらい)以外に何かをつげようとしているのでしょうか・・・・。それに・・・葉っぱが何のために色づくのか色々な説はあるみたいですが、よくわかっていないのです。
ところで、僕らって安定を求めていませんか・・・?心はずっとこのままでいたい・・と安定を求めます。安定って、ある意味、麻痺(まひ)することじゃぁないでしょうか?そんな僕らに、紅葉(=自然)は常に変化(=刺激)しているのだよ・・と、伝えているのかもしれません。だって、木々の色の変化はけっこう刺激的ですよ。静かだった山々が、目に見えてわかるほど、静(せい)から動(どう)に変わる瞬間(とき)です。普段の山(静)は目に優(やさ)しい緑。紅葉時の山の赤・黄色は、太陽(動)に象徴(しょうちょう)されるように情熱的(じょうねつてき?)です。
これらの変化は、五感(=感覚器官)を通して、脳が感じる?のです。ぼくらの脳って、刺激は必要なのですが、あまりにも強い刺激は逆に毒(どく)にもなります。ホントっ、この強~い刺激(毒)に弱いのです。
たとえば、口は辛(から)いものに弱いし、耳は大きな音に弱い。目は強烈(きょうれつ)な色(光)に弱いし、鼻は強い匂(にお)いに弱い。そして、肌は衝撃(しょうげき=痛み・痒み)に弱い。これら感覚器官は、強い刺激に弱いのです。みなさんも経験がありますよね。辛いものを食べた後、しばらく味覚(みかく)が麻痺(まひ)してしまい、薄味(うすあじ)がよくわからない。タバコを吸っていると、ニオイが麻痺したり、長い間正座(せいざ)した後、立ったときしびれて足の感じがいつもと違う等々・・・。
夜空に輝(かがや)く花火もそうですが、暗い空が花火で一瞬(いっしゅん)パァ~ッと明るくなる。この急な変化も強い刺激です。このとき、好きな人に告白(こくはく)すれば、想(おも)いがかなうかもしれません。花火で脳が麻痺しているので、相手があなたのことを普段より良く見えて(錯覚をおこして)いるかもしれないから・・・。まぁ、あなたも同じような状態(かんじ)ですけどね。
こうした刺激物になれてしまうと、脳の繊細(せんさい)なセンサーがチョットおかしくなってしまうんですねぇ~。麻薬(まやく=刺激物)がやめられなくなるように、より強い刺激を求める(中毒)ようになってしまうんです。
そう、真っ黒い水に、いくらきれいな色の水をいれても、その黒い水に混(ま)じってしまうような感じでしょうか。現代は強い刺激物(黒い水)がありすぎて、微妙(びみょう)な変化(きれいな色の水)がわからなくなっているのかもしれませんね。この微妙な変化に気づくことは、物事の発見にもつながりますし、災害にも敏感(びんかん=未然に防ぐ可能性)になるんじゃぁないでしょうか。そう、「紅葉(=自然)」は、僕らの麻痺した脳に、少し刺激を与えることで、ものごとの変化に気づかせ、本当に大切なものをぼくらに教えてくれているのかもしれません。また「紅葉」は、人工的な刺激物と違って、いつまでもその姿をとどめていません(刺激が続かない)から、麻薬のように中毒にはならないので安心ですよね。
最後に、紅葉に絡(から)めて2つほど歌を紹介します。
形見(かたみ)とて何か残さむ春は花 夏ほととぎす秋はもみぢ葉
裏を見せ 表を見せて 散る紅葉(もみじ)
・・・・・by 良寛(りょうかん・曹洞宗のお坊さん)